透き通るガラスの向こうで、ひかえめに並ぶうつわ達。そおっとドアを開けると、「こんにちは」って、いつもやさしく迎えてくれる場所。
錦町商店街にある撫菜花工藝(なずなこうげい)は、古川元吾さん、真紀子さんご夫妻が営む、手しごとのうつわ屋さんです。
取材日は次の作品展の準備に大忙し。机の上には、作業中のお皿が山積みでした。
「私たちもひと休みしたかったから」
そう言って手をとめて、お茶を淹れてくれた真紀子さん。静かな工房に響くのは、元吾さんが丁寧にうつわを削る音。
ここには、いつもとは違う時間が流れているように感じます。心までぽかぽかする、おいしいお茶でした。
横浜の工房を閉め、制作の場所として選んだ桐生。出産と引っ越しが重なるという、激動の年でした。そんな人生の大きな転機を乗り越えられたのは「一人ではなかったから」。
それでも出産前後、体調はなかなか回復せず、つらい日々もありました。
「あの頃は笑えなかった」と話します。
愛娘のはなちゃんは4歳になりました。
制作と全国各地のイベント出店。百貨店からも声がかかるようになりました。多忙な毎日を支えてくれるのは、同居のご両親と、ご主人の元吾さん。
「子育ても主婦も、そんなに頑張ってないんですよ。みんなに助けてもらっています。感謝感謝」。
生まれたときから、ご両親の作るうつわに囲まれているはなちゃん。こむぎねんどで、よくコップやおさらを作って遊んでいるそうです。
「おおきくなったらこうぼうにいく」
はなちゃんのあこがれの場所は、おとうちゃんとおかあちゃんがはたらく撫菜花工藝です。
「作りたいものを作っているだけなんです。これからも一生懸命作るだけ」
自然体でうつわを作り続ける穏やかな暮らし。作品をやさしく照らすガラス戸の光に、春が近づいていることを感じました。
【名称】撫菜花工藝 なずなこうげい
【住所】桐生市錦町2-4-5
【TEL】0277-46-6341
【定休日】水・日曜日、第5週