妊活中・妊娠中に知っておきたい感染症~TORCH症候群って何?~

 

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妊活中や妊娠中の方が注意したい感染症……「TORCH症候群」って知っていますか?ママが感染症にかかると、胎盤をとおして赤ちゃんにも感染します。そして、赤ちゃんに感染した病原体は、ときに赤ちゃんに障害を引き起こすことがあります。このような病原体は、ワクチンで予防できるものもありますが、有効なワクチンがなく、完全に防ぐことが難しいものもあります。きちんとした知識を持ち、予防に努めることはとてもたいせつです。

TORCH症候群とは?

TORCH症候群とは、たくさんある母子感染を引き起こす病原体のうち、ママの胎盤をとおして感染した赤ちゃんに、奇形や障害を引き起こす病原体の頭文字をとって名づけられたものです。

 

T…Toxoplasmosis:トキソプラズマ症

O…Other:その他(B型肝炎ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスなど)

R…Rubella:風疹

C…Cytomegalovirus:サイトメガロウイルス

H…Herpes simplex virus:単純ヘルペスウイルス

を示しています。

トキソプラズマ症

妊婦さんが妊娠中にトキソプラズマに初感染すると、さまざまなトラブル(流産や赤ちゃんの障害)が起こることがあります。昔は、砂場遊びや土いじりをとおして、子どものうちにトキソプラズマに感染し、免疫ができていました。しかし、近年は生活環境の変化により、トキソプラズマに対する免疫を持っていないママが増えています。

トキソプラズマの免疫の有無を確認したい場合は、自費(1000円程度)で血液検査をすればわかります。トキソプラズマの免疫のないママは感染を予防するために、次の点に気をつけて過ごしてください。

 

・生ハムや生肉は食べない。

・(上の子がいる場合)おむつ替えや嘔吐物の処理は使い捨て手袋とマスクを着用して行う。

・(上の子がいる場合)砂場遊びは、ほかの人にお願いする。

・ガーデニングや畑仕事等の土いじりはやめておく。

・飼っている猫のトイレ掃除はほかの人にお願いする。

風疹

妊婦さんが妊娠22週頃までに風疹ウイルスに初感染すると、赤ちゃんに、心疾患・難聴・白内障などの症状を引き起こすことがあります。風疹の免疫の有無は血液検査で知ることができ、抗体の値が低い場合は、妊娠前と出産後であれば、予防接種を受けることができます。

妊娠中に風疹の抗体が無い、あるいは値が低いとわかった場合は、夫や上の子どもなど身近な家族に予防接種(費用6000円前後)を受けてもらいましょう。さらに、妊婦さんは、妊娠22週くらいまでは人混みを避け、予防に努めましょう。

サイトメガロウイルス

妊婦さんが妊娠中にサイトメガロウイルスに初感染すると、赤ちゃんに、さまざまなトラブル(流産や赤ちゃんの障害)が起こることがあります。日本人の妊娠可能年齢の女性の60~70%は、過去にサイトメガロウイルスに感染し、免疫を持っているとされています。

しかし、近年は生活環境が清潔になったことにより、サイトメガロウイルスに対する免疫を持っていないママが増えています。サイトメガロウイルスの免疫の有無を確認したい場合は、自費(3000円程度)で血液検査をすればわかります。

サイトメガロウイルスに感染する原因でいちばん多いのは、小さな子どもの尿や唾液に触れることです。そのため、サイトメガロウイルスの免疫のない妊婦さんで、上の子など小さな子どものお世話をする場合は、おむつ替え、食事の介助、鼻水をふき取ってあげたあとなどは、注意が必要です。

 

・手洗いをしっかりする。(アルコール消毒も有効)

・(上の子がいる場合)食べ残しは食べない。お箸など別々にする。

・(上の子がいる場合)おむつ替えやトイレ掃除のときは、マスクと手袋を着用する。

・(上の子がいる場合)お子さんとのキスはやめておく(おでこや頬にしてください)。

・性交渉にはコンドームを着用する。

単純ヘルペスウイルス

単純ヘルペスウイルスの母子感染症には、妊娠中のママの胎盤をとおして、赤ちゃんが感

染する「先天性感染症」と、赤ちゃんが産道を通って産まれてくる時に、感染する「新生児

ヘルペス」があります。

先天性感染症の場合、赤ちゃんに重い疾患としてあらわれることはきわめて稀です。新生

児ヘルペスの場合は、多臓器不全や、中枢神経系の後遺症を残すことがあります。ただし、妊娠中に単純ヘルペスウイルスの感染が確認できた場合、塗り薬や飲み薬などの処方や点滴治療、あるいは帝王切開による出産などで、赤ちゃんへの感染を防ぐことが可能です。

TORCH症候群の中で、単純ヘルペスウイルスは、治療法や対処法が確立されています。

そのため、出産までに単純ヘルペスウイルスに感染していることが確認されれば、ほとんどの場合、赤ちゃんに感染することを防げます。

 

 

これらのウイルスについて自分に免疫があるのかどうか、妊娠の有無にかかわらず、むしろ妊娠をする前に知っておくことがたいせつなのではないでしょうか。自分に抗体がないことを知ることで、ある程度の予防ができるものも多くあります。また、仮に赤ちゃんが感染して産まれてきても、あらかじめ知っておくことで、早期に治療や対処ができるというメリットもあります。しっかりと知識を備えておくことが、とても重要なのです。

 

(ライター:小川純礼)